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ΔΣ変調をスローモーションで見て学ぶ!「DSD Explained」を公開しました

CDを超える高音質を実現するメディア、SACD(Super Audio CD)に採用され、オーディオマニア向け音楽配信サービスも一部採用する音楽フォーマット、DSD (Direct Stream Digital) 。ここで採用される高音質技術、特に現代のほとんどのAD/DAコンバーターの心臓部であるΔΣ(デルタシグマ)変調の仕組みは、実はちょっと複雑で、専門家でないとなかなか理解しにくい部分かもしれません。


「どうやってアナログ信号を1bitのデジタル信号に変えているの?」「ノイズシェーピングって何?」そんな疑問を、視覚的に、スローモーションで解き明かすことができるWebアプリケーション「DSD Explained」を開発・公開しました!



オーディオ技術の基礎学習や、デジタル信号処理の入門教材として、また、DSDやハイレゾの仕組みに興味のある方に、楽しみながら理解を深めていただけるのではないかと思います。


DSD Explained



「DSD Explained」で何ができるのか?

このアプリは、ΔΣ変調器がアナログ信号をデジタル信号に変換し、それをローパスフィルターで再構築(復調)する一連のプロセスを、インタラクティブなアニメーションで表示します。


スローモーション再生:

通常は目に見えない超高速な処理を、ゆっくりとした速度で観察できます。


パラメータの自由な変更:

  • オーバーサンプリング周波数 (64fs〜512fs)

  • 量子化ビット深度 (1bit DSD 〜 6bit Multi-bit)

  • ノイズシェーピング次数 (0次 〜 6次)

  • 入力信号周波数 (20Hz 〜 90kHz)

  • 再構成用ローパスフィルター (カットオフ周波数、次数)

  • これらの設定を変えることで、出力されるデジタル信号や最終的な音質(のシミュレーション結果)がどう変化するかをリアルタイムで確認できます。


視覚的な確認:

  • 時間領域の波形(元のアナログ信号、変調後のデジタル信号、フィルター後の再構築信号)を重ねて表示。

  • 周波数領域のFFTスペクトル表示で、ノイズシェーピングによって量子化ノイズが可聴帯域外へ追いやられる様子や、ローパスフィルターで高周波ノイズが除去される様子が一目瞭然です。


特に、1bit DSDとマルチビットΔΣの違いや、ノイズシェーピング次数の効果、オーバーサンプリング周波数の影響などを、耳だけでなく目でも理解できるのが大きな特徴です。



アプリURL / ソースコード

「DSD Explained」は、Webブラウザがあればどなたでも今すぐ無料でお試しいただけます。インストールは不要です。

また、本アプリはオープンソースとしてGitHubでコードも公開しています。仕組みに興味のある方はぜひご覧ください。



使い方解説

アプリの基本的な使い方と、各設定項目の簡単な解説です。


  1. Simulation Speed(シミュレーション速度):

    • アニメーションの再生速度を調整します(対数スケール)。値を小さくするほど遅くなります。

    • これは学習・観察用の機能で、実際のAD/DA変換器の性能とは関係ありません。

  2. Over Sampling(オーバーサンプリング周波数):

    • 基準周波数(44.1kHz)の何倍の速度でサンプリングするかを設定します (64倍、128倍など)。

    • 高くするほど量子化ノイズが広帯域に分散され、可聴帯域内のノイズが減ります(SNRが向上します)が、実際の回路では消費電力や複雑さが増します。FFT表示でノイズフロアの変化を見てみましょう。

  3. A/D Bits(ADビット数):

    • 量子化のビット数を1bitから6bitの間で設定します。

    • 1bitがいわゆるDSD方式、2bit以上がマルチビットΔΣ方式に相当します。ビット数を増やすと量子化ステップが細かくなり、元々の量子化ノイズは減りますが、データ量は増えます。

  4. Signal Frequency(信号周波数):

    • 入力されるテスト信号(サイン波)の周波数を設定します。

  5. Noise Shaping Order(ノイズシェーピング次数):

    • ΔΣ変調の要であるノイズシェーピングの次数を0次(OFF)から6次の間で設定します。

    • 次数を上げるほど、低周波数域(可聴帯域)のノイズがより効果的に高周波数域へ押し出されます。FFT表示で劇的にノイズフロアの形が変わる様子を確認できます。

  6. Show Waveforms(波形表示切替):

    • 表示する波形を選択します。

      • Original (青): 元の入力アナログ信号

      • Digital (黄): ΔΣ変調器から出力されたデジタル信号(1bit時はパルス密度、マルチビット時は階段状)

      • Reconstructed (赤): デジタル信号をローパスフィルターに通して再構築した信号

  7. LPF Cutoff Frequency(LPFカットオフ周波数):

    • 再構築に使うローパスフィルターのカットオフ周波数を設定します。ΔΣ変調で高域に追いやられたノイズを除去するために使います。

  8. LPF Order(LPF次数):

    • 再構築ローパスフィルターの次数(遮断特性の急峻さ)を設定します。次数が高いほど急峻に高域ノイズをカットできますが、実際の回路では位相特性の劣化やコスト増につながる場合があります。

表示内容の見方

画面下部の2つのグラフで、シミュレーション結果を視覚的に確認できます。


Time Domain Waveform(時間領域波形):

  • 横軸が時間、縦軸が振幅です。選択した波形(入力:青、デジタル:黄、再構築:赤)が表示されます。

  • 1bit設定時の黄色いデジタル波形は、パルスの密度で元の信号の振幅を表している点に注目してみてください。

  • Frequency Domain (FFT)(周波数領域スペクトル):

    • 横軸が周波数(対数表示: 20Hz〜96kHz)、縦軸がレベル(dB表示: 0dB 〜 -192dB)です。

    • 再構築された信号(赤)の周波数成分をリアルタイムで表示します。

    • ノイズシェーピング次数を上げると低域のノイズフロアが下がり、高域が持ち上がる様子や、LPFの設定を変えることで高域ノイズが減衰する様子などがよく分かります。


まとめ

スマートフォンからオーディオインターフェース、高級オーディオ機器まで、私たちの周りの多くのデジタル機器で活躍しているΔΣ変調技術。その仕組みは少し複雑ですが、現代のデジタルオーディオを支える非常に重要な技術です。


今回公開した「DSD Explained」は、このΔΣ変調のプロセスを、まるで顕微鏡で覗き込むように、ゆっくりと、そしてインタラクティブに探求できるシミュレーションツールです。


デジタル信号処理やオーディオ工学を学ぶ学生の方、AD/DAコンバーターの仕組みを知りたいエンジニアの方、DSDやハイレゾ音源の原理に興味のあるオーディオファンの方、そして純粋に「音のデジタル化」の不思議に触れてみたい方まで、幅広い方々に楽しんでいただければ幸いです。


ぜひこの「DSD Explained」を使って、設定を変えながら波形やスペクトルの変化を観察し、デジタルオーディオの奥深い世界を体験してみてください。



解説動画はこちら

【オーディオ】DSDの価値…?もはやゼロです。

 
 
 

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